第15話

 


 あの日、俺は告白しようと思ってた。


 結局できずじまいだったけど、「チャンスだ」って思ってた。


 自分でもよくわからなかった。


 いつから、しおりのことが好きだったのか。


 なんで、告白しようと思ったのか。



 当時、本当は怖かったんだ。


 上京するって聞いた時、もしかしたら、もう会えないかもしれないって思ってた。


 それに、まさか誘われるなんて思いもしなかった。


 …そりゃ、驚いたさ。


 中3の頃はクラスも違ったし、お互い、部活とか勉強とかで忙しかったし。



 彼女が俺を誘ったのは、“しばらく帰って来れないから”って。


 少しでも、思い出を残しておきたいから…って。



 俺の他に、ミズキも誘われてた。


 ミズキっていうのは俺の親友で、幼馴染。


 しおりと同じく、子供の頃から一緒だった。




 しおりがプロのピアニストになりたいっていうことは、昔から知ってた。


 コンテストにも何回か行ったし、コンクールにだって、応援しに行った。


 俺やミズキにとっての自慢だった。


 彼女は。


 だって、プロが注目するほどの逸材だったんだ。


 大観衆の前でも動じずに、涼しい顔でピアノの前に座ってた。


 いつも内気な彼女が、ピアノの前では、別人のように変わって——


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