第16話




 「好き」って、確かにそう思っていた。


 その感情が、どこから来たものかはわからない。


 いつの日からか彼女が気になるようになって、教室や放課後の帰り道で、ふと、目で追うようになって…



 思えば、昔からだったのかもしれない。


 祭りに行く道中で、夜空を見上げながら、彼女のことを考えてた。


 ミズキに誘われて付き合ったピアノ教室。


 そこで、初めてしおりと出会った。


 学校では見かけない子が、ピアノの前にいた。


 教室の片隅。


 その、窓際に。



 彼女は高知から引っ越してきてた。


 両親の都合で、大分の山奥まで。


 保育園に通う最後の年だった。


 毎週金曜日になると、ピアノ教室には彼女がいた。


 片手で必死に弾こうとしているミズキのそばで、楽譜も見ずにメロディーを奏でていた。


 凄すぎて、言葉も出なかった。



 


 

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