第14話



 「じゃあなんで、キミを襲ったの?」


 「…そんなの、知らないけど」


 「彼の目的が、キミを殺すことだとしたら?」


 「は!!?」



 俺を殺す…?



 …いやいやいや



 「…冗談だろ?」


 「この状況で、冗談なんて言えると思う?」


 「…わかってるけど、だからってだな…」


 「理解できない?」


 「当たり前だろ!」


 「じゃあ、キミが私のことを「好き」だっていうことは?」




 ………………………へ?



 思いもよらない言葉が、頭の中を掠めた。


 

 『好き』



 確かに、そう言った。


 聞き間違いなんかじゃない。


 はっきり、耳の中に届いた。




 ……でも、なんで………?




 「…今、なんて?」


 「キミがいちばんよく知ってるでしょ。その“気持ち”は」



 俺がしおりのことをどう思ってるか。


 そのことを、彼女に打ち明けたことはなかった。



 この場所。


 この時間。



 浴衣姿を着た彼女と、——2人。


 中学3年の夏。


 祭りがあった日だった。


 彼女から、一緒に花火を見ようと言われたのは。



 

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