君の名は「グール」
単調な日々に、変化は唐突に訪れた。 地の底から響くような唸り声。 レオナルドが遭遇したのは、腐肉を纏った悪鬼、「グール」だった。 剥き出しの筋肉、長い舌、狂気に満ちた眼光。それは、理性を失ったアンデッドの成れの果てであり、あるいはレオナルド自身がなり得たかもしれない未来の姿だった。
「……貴様は、俺の試練か」
剣を構える。あのデスナイトほどの絶望感はない。だが、油断すれば即座に喰われるだろう殺気がある。 「これなら……成長の糧になる」
激突の瞬間、火花が散った。 グールの爪は石壁すら容易く抉(えぐ)り、その再生力は驚異的だった。斬り裂いても、傷口から煙を上げて肉が盛り上がる。 それでもレオナルドは退かなかった。 生前の技術、今の身体能力、そして「戻りたい」という執念。すべてを総動員し、獣の猛攻をいなし続ける。
長い戦いだった。数時間か、あるいは数日か。 ついに剣がグールの心臓を貫き、その命脈を断ち切った時、濃密な光がレオナルドを包み込んだ。 力が満ちる。乾いた大地が雨を吸うように、魂と肉体が潤っていく。
「……あ」
戦いを終えた彼が目にしたのは、自身の「手」だった。 戦う前までは白骨が見えていた指先に、皮膚が覆っている。 恐る恐る触れる。ざらついた感触はあるが、そこには確かに「人間の手」としての輪郭が戻りつつあった。
「俺の手だ……」
その光景は、何よりも雄弁に希望を語っていた。 戦えば、治る。奪えば、戻れる。 自分の身体が再生していく事実は、彼にとってどんな宝石よりも価値のある報酬だった。
「待っていろ……必ず、元の姿で」
再生しかけた拳を強く握りしめる。 レオナルドの歩みは、もはや迷いなきものとなっていた。
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