ダメなら引き返せばええんや
死の王(デスナイト)が見下ろしている。 その圧倒的な圧力の前に、俺の生存本能が「逃げろ」と警鐘を乱打していた。 勝てない。今の俺では、奴の鎧にかすり傷をつけるのが精一杯だ。
「……くそッ」
悔しさが口の中に広がる。 だが、ここで意地を張って消滅すれば、待っている彼女への想いもそこで途絶える。 生きてこそだ。どんなに無様でも、生きて強くなれば、負けにはならない。 レオナルドは血の涙を流すような思いで、その場を後にした。
背中に感じるデスナイトの視線は、逃げ帰る敗者への嘲笑か、あるいは慈悲か。 どちらにせよ、今の俺には屈辱でしかない。
「力が要る……。奴を殺し、乗り越えるための力が」
安全な階層まで引き返した俺の目に、徘徊する下級アンデッドたちが映る。 以前の俺なら避けて通ったかもしれない群れ。だが今は、奴らが俺を進化させるための「餌」に見えた。 「俺の糧になれ」 躊躇なく剣を突き立てる。 骨を砕き、肉を断つ。返り血を浴びるたび、微かな力が俺の中に蓄積されていく。 かつて騎士だった俺が、同族を喰らって力をつけるなど、外道(げどう)の所業かもしれない。だが、綺麗事で帰れるほど甘い場所ではないのだ。
デスナイトよ、首を洗って待っていろ。 この迷宮の底で何百、何千の死を喰らい尽くしてでも、俺は必ず貴様の元へ戻る。 そしてその時こそ、貴様の力を俺の最後の進化の糧にしてやる。
暗闇の中、レオナルドは飢えた獣のような目で、次なる獲物を探し求めた。
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