アンデッドの「格」


デスナイトの剛剣を紙一重で受け流しながら、レオナルドは自問していた。 (なぜ、俺はまだ立っていられる?) 相手は伝説の騎士の成れの果て。本来なら一合で粉砕されていてもおかしくない。 だが、俺は戦えている。恐怖に震えながらも、身体は的確に最適解を選び続けている。


その時、理解した。俺の中に流れるものが、他の有象無象とは決定的に違うのだと。 迷宮を徘徊するスケルトンやゾンビを見ろ。奴らはただ、生への嫉妬や食欲で動く操り人形(マリオネット)だ。剣を振るっても、そこには技術も意志もない。 だが俺は違う。「レヴナント」──強烈な未練が魂を現世に縛り付けた、特異な個体。


(俺の剣には、技がある。記憶がある) 繰り出す一撃には、王宮騎士として叩き込まれた剣技の冴えが宿っている。 足運びには、数多の戦場を駆けた経験が生きている。 腐った脳髄ではなく、魂に刻まれた「騎士の誇り」が、この身体を精密機械のように駆動させているのだ。


「俺が他の亡者と違うのは……この『意志』のせいか」


デスナイトの追撃をバックステップで躱す。 ゾンビならば反応できずに肉塊となっていただろう。スケルトンならば一撃で砕け散っていただろう。 だが、俺は耐え、考え、隙を窺うことができる。 この胸に燻る「帰りたい」という執念。それこそが、俺をただの動く死体から、戦う戦士へと昇華させているのだ。


とはいえ、目の前のデスナイトは遥か高みにいる。 今の俺は、雑魚よりはマシな程度。奴と互角に渡り合うには、強さが、速さが、全てが足りない。 だが、それは絶望ではなく、渇望へと変わった。


(もっと強く……進化しなければ) 今の俺には「成長」という武器がある。 意志なき亡者ではなく、意志あるレヴナントであるならば。 いつかこの黒騎士さえも凌駕し、その力を我が物にする日まで──俺は食らいつき続ける。

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