初めての格上
闇の奥底へ進むにつれ、レオナルドは己が何者であるかを悟っていた。 「レヴナント」。死してなお生への執着を捨てきれぬ、妄執の亡霊。 腐り落ちた肉体を動かしているのは、魔力ではなく、帰郷への強烈な渇望だった。記憶が鮮明であるほど、その苦しみは深く、そして力となる。
さらに深部へ踏み入った先で、彼は戦慄した。 通路を塞ぐように佇む、禍々しくも威厳ある影。「デスナイト」。 かつての英雄が堕ちた姿であり、迷宮の守護者とも呼べる存在。その双眸に宿る冷徹な殺気は、レオナルドのような下級アンデッドを虫けらのように見下していた。
(格が、違いすぎる……)
対峙しただけで魂が削り取られるような重圧。逃げ出したいという恐怖が全身を駆け巡る。だが、ここで引けば永遠に闇の中だ。 人間へ戻る道は、この絶望的な壁の向こうにしかない。
「……退くわけにはいかない」
唸りを上げて迫る大剣。それは回避不能な断頭台の刃に見えた。 レオナルドは咄嗟に剣を合わせるが、圧倒的な質量の前に弾き飛ばされそうになる。 衝撃が腐った肉を揺らし、意識が飛びかける。それでも、彼を支えたのは「帰る」という誓いだけだった。
「俺が……ここで終わってたまるか……!」
死に物狂いで剣を振るう。技術も誇りもかなぐり捨て、ただ生き残るためだけに刃を繰り出す。 幾度目かの交錯。レオナルドの剣が、デスナイトの黒い甲冑をわずかに削った。 その瞬間、彼の中に確かな変化が起きた。 強者の波動に触れ、傷つけられることで、彼の霊核が鍛え上げられていく。微かな一撃ですら、この極限状態においては糧となるのだ。
致命傷を避け、距離を取る。 倒すことは叶わない。今の実力差は歴然だ。 だが、今の攻防で確かに俺は強くなった。この死線こそが、人間への階段なのだ。
「どれだけ遠くとも……俺は必ず帰る」
レオナルドは剣を構え直す。 闇に溶け込むような黒騎士を前に、その瞳だけは決して折れない意志の光を宿していた。
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