第83話

俺たちは取材やテレビ出演の仕事ばかり増えて、歌う時間が減って行った。

久しぶりにレコーディングなんかをしても、




TATSUYAさんの提案で、ハクとジョーのコーラスパートが増やされ




「誰かがフラットしてるやり直し」


「…はい」


「あとシド。ダイナミクスが足りない」




Jackdowらしさは、あまり求められていない…と感じた頃には遅かった。




「シド、新曲。メロディラインは良いけど、もう少しキャッチーに出来ないか?」


「………」




拒否権はなかった。俺らの曲が売れるため、俺らの存在を広めるためのTATSUYAさんの判断は全て正しかった。


比例するように、俺らは活躍していった。





……だけどそこに俺の意思は反映されず、心だけが置いてきぼりになっていた。

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