第82話

みんなが心配だったけど、俺自身自分の耳の事で精一杯だった。




色々な事が重なってボロボロになった俺の支えは、いつの間にかジョーとハクになっていた。



それぞれROCKや楽器が好きな事。受験する高校が同じな事。バンドを組みたい事。色々な事を語り合った。




同じ傷や痛みを抱えた俺たちは、


お互いを尊重し合いながら、強い絆で結ばれた。





「起きろ、シド」




ハクに体を揺らされて目が覚めた。移動車の中で、眠りながら懐かしい日々を思い出していたらしい。




「あ…、やべ…。仕事するつもりが…」




目を擦りながら、手元に用意していたノートやペンやボイレコを鞄に詰め込んで車を出た。




「無理すんなよシド。なんか痩せたし」


「俺もそう思う」




そういうこいつらも、なんだか疲れ切った顔だ。





この年、ロンドンの有名なバンドのギタリストが死んで10年目を迎えていた。



俺たちは、そのトリビュートアルバムに出演した。



海外バンドや有名なギタリストが出演する中、新人アーティストが起用される事はあまりないとTATSUYAさんは言っていて、その出来を褒めてくれた。

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