第58話

またライブの日にな、と別れる俺たち。




「何か、シドってすげーまともな人間じゃね?俺らなんかよりよっぽど」


「ふっ。そうだな?」





俺は、ルーキーが自分が思っていたよりも人間らしかった事に


満足していたのかもしれない。






ーーー後悔した。






「ーーー……」






冬休みも終わり冬も深まったその日、俺は学校の誰もいない体育館のステージでギターを片手に歌っていた。




「ハルの声ってさ、自由だよね」





一緒に授業をサボっていたBlessのメンツが寒そうに缶コーヒーを啜りながら言った。





「え?どういう意味?」




俺の問い掛けに、もう1人のメンツが頷いた。





「分かる。自由なんだよ。解放感があって、明るくて温かくて、幸せなんだよ。天使の歌声なんだよ、仲間だからとかじゃなくてさ。人を幸せに出来る声だよ」





気持ち悪いななんなんだこいつら。




「ありがとう」





……本当はめっちゃ嬉しいけど……。

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