第56話

「え…?アイツ、シド助けねぇし宮前シカトかよ…」


「聖夜さんが仕事で忙しい間は、エルフのスタ練手伝わされてるらしいぞ。聖夜さんすげー無理やり約束させてるの見たけど…」





ツワモノだ…レオってやつ。


この張り詰めてる空気、シカトしちまうなんて…。


やっぱ、カイが言ってた事は間違いなかった。だけど今の状況どうにかしねぇと、橋戸巧が宮前に連れて行かれちまう……。





「宮前さん」






俺は、仕方なく、本当に仕方なくそう言葉を発した。




うわぁーやっちゃったよ、って顔をしたのは、カイも、周りにいた他の奴らも同じだった。




「ソイツは俺と先約があるんです。悪いんですけど今日は…」


「てめぇ!永輔さんに向かってなんつー失礼な…」


「ふっ、白石に…櫻井か。お前ら気が向いたらレジスタンスに入れよ。俺も忙しい。今日は帰ってやる」




宮前の手下にぶん殴られることを覚悟した俺だったが、何とかそれは免れたらしい。





「あーぁ。この場はどうにか収まったけど、今日のせいで俺たちはアイツらに顔が知れ渡ったぞ」



ぞろぞろとスタジオを出て行くレジスタンスの背中を睨みながら

一歩後ろにいたカイが苦笑したのが分かった。




「あー、えっと、橋戸さん、少し時間貰えますか?」




勇気を出してそう橋戸巧に恐る恐る話しかけた俺は、





「あ……俺?」





戦っている時や、歌っている時の不吉なオーラは無くなっていて…




人見知り気味に自身を指差し俺に問い掛ける橋戸巧は、



俺らが思っているよりもずっと人間らしい奴だった。

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