第38話

目が合った瞬間、疾風の如く暴れていた2人が止まった。



不敵に笑ったのは、橋戸巧ではなかった。




「なんだ……?アイツ……」





あんな絶対零度な雰囲気の奴は、見た事がない。





……そんな時だった。遠くからパトカーのサイレンが聞こえて来た。





「通報されたか。仕方ないよな、夜中にこれだけ騒いだら。逃げるぞお前ら、ハル」


「はいっす!スバルさん!」


「カイセイ!行くぞ」


「はいっ」




カイは先輩と、俺はスバル君たちとそれぞれ車に乗りこの場を去った。





興奮が覚める事はなかった。






なんだか、運命的な出逢いをしたように、あの光景は俺の胸に熱を持たせた。











「あれは、infinity's側の奴っぽいな」





家に帰ってスバル君と麻婆豆腐を食べている時、スバル君が呟いた。




「橋戸巧はS.R.Cのルーキーだ。最近現れた奴なんだけど、喧嘩があの調子だし、すげー目立つから。バンドやってるらしいし」


「ドラム!?」


「多分ちげー。ギターケース背負ってるの見た事ある。つーかお前はカイセイをスカウトしたんだろ。浮気者」


「うわぁぁ!カイに返事聞くの忘れたぁぁ!」


「でだ。橋戸巧と睨み合ってた奴はinfinity'sのルーキーと見た。すげぇ目付きだったな」


「うわぁぁ!携番も知らねぇし、うわぁぁ!」


「ハルうるせぇよ!聞け!」


「いたいっ」




スバル君からゲンコツを貰ってシュンとしてる俺を、足元に座っていたメリーが心配そうに見上げていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る