第39話

infinity'sのルーキーの状態は分からないまま、俺はカイを追い回す生活が続いていた。




「カイー!頼むよーカイ!やろーぜバンドぉぉ!青春しよーぜぇぇ」


「うるさい今本読んでるんだよ黙れ」



カイは大抵駅の近くのカフェに居た。いつも本を読んでいていつも制服だったけど、学校にはあまり行っていない様子だった。



「なぁに読んでんだよ、いつも」



カイの向かいの席に座っていた俺は、向かい側からカイの本の表紙を覗き込む。



GOETHE



「…………ゴエザ?」


「…………ゲーテだ」


「聞いた事ないな。新作かよ?」


「…………静かにしろ」





カイは表情を変えずにページを巡っている。




「カイー、何でダメなの?Blessの他にスカウト来てるとか?」


「……………」


「それとも、ドラム、上手く出来ない…とか?」



俺の挑発に、カイはギロりと視線を向けた。




「お前らんとこと違って、俺たちの方は毎日忙しいんだ。そんな時間ねぇよ」




…それが、チーマーの事っていうのは言われなくても分かった。




「まぁ、俺は確かにバンドが一番だよ。チーマーの事に関しては、ぶっちゃけ部活感覚っつうか。こんな事言ったらスバル君に殺されるけど。争い事は嫌いだし」


「………」


「カイ。俺はお前の楽しそうにしてる表情見た事ねぇんだけど、その忙しさの中に、なんかやり甲斐感じてんの?」




俺の言葉にカイの動きが止まった。

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