第37話
「なんだ!?」
「ハル!あれ見ろ!」
状況を飲み込めずキョロキョロと周りを見渡す俺にBlessのメンツが指差す。
「あれがS.R.Cの橋戸巧だよ!」
「ハシドタクミ……………?」
そう言われて見た先に居たのは、
白いワイシャツを血色に染めて断末魔の悲鳴をあげる音を烈火の如く殴って引きずり回す……
「なんだアイツ……鬼かよ!?」
鬼のように不吉な男。
それが俺がシドを初めて見た時の、率直な感想だった。
「怖い。あんな奴と喧嘩したら俺のイケメンフェイスが何個あっても足りない。スバル君、帰ろう。今日のうちの晩飯は麻婆豆腐だ。ね、スバル君。帰ろう」
変に冷静になってスバル君に説得を始める俺を、カイが飽きれたように眺めている。
「ハル、見ろ………」
そんな俺の言葉が届いていないのか、スバル君は俺の頭をグイとフェンスの向こうに向けられた。
瞬きをしている暇の無い位に激しい戦場。
橋戸巧は次の獲物を探すべく、伸びた奴を投げ捨てて走りだし目についた奴を殴り飛ばす。
車が止まり、雄叫びを上げながら参戦していく奴ら。それとすれ違うように逃げ出して行く奴ら。
走り出す橋戸巧。それを見て逃げ出す奴や許しをこう奴や立ち向かう奴を片っ端から殴り飛ばす。
そんな橋戸巧が、ある時ピタッと立ち止まった。
なんだ?何故立ち止まった?
橋戸巧の視線の先を追う俺。
「ーーー……」
橋戸巧の口が微かに動いた。
その視線に立っていたのは、
頬についた返り血を乱暴に拳で拭って鋭い瞳だけを相手に向けている、冷血な雰囲気の男………。
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