第36話

車を降りてフェンスに指を絡ませるように中を覗き込むと、そこはなんというか、戦場を通り越して地獄だった。



歓声や罵声が飛び交うフェンスの外は、サッカーでも観戦しにきたように酒を片手に囃し立ててる様子で。



「ひでぇな」



立ち尽くしてる俺の隣で、カイが小さくそう呟いた言葉は歓声の中に溶けて消えた。




「あ!カイセイ!捜したぞ!」




そこにカイの先輩が駆け寄ってきた。




………やべ。忘れてた。




「わりぃわりぃ、うちの弟とお前んとこのカイセイが友達になったみたいでよー。許してやってくれ」


「スバルさん…ちわっす!」




……一瞬ひやりとしたが、この場はスバル君が収めてくれたみたいだ。良かった…。





「うぁぁぁぁぁぁ!!!わぁぁぁぁ!!!ぎゃあぁぁぁ!!」




そこに、フェンスの中から断末魔の叫びのような声が聞こえてきた。

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