第16話 奸計失敗
朝、目を覚ますと、そこは見慣れぬ部屋だった。
私はというと、申し訳程度にバスタオルを身にまとってはいるものの、その下は全裸、すっぽんぽんだ。
そして隣では例の翔太くんが健やかな寝息を立てている。
ああ、そうだ、昨晩は翔太君と飲んで、私、飲み過ぎて、それで…
胃の中のものをすっかり吐いてしまったせいか、二日酔いの朝にしては気分は悪くない。意識もはっきりしている。
衣服がどこに行ったか分からないので、裸にバスタオルといういでたちで、洗面所で顔を洗っていると、徐々に昨晩の記憶がよみがえってきた。
彼のことを相談するふりをして翔太くんを誘惑しちゃおう、私は明確な下心をもって彼の部屋を訪れた。若い男の人と二人きりでお酒を飲むなんて久しぶりで、私は最初からハイテンションだった。
ワインのボトルが空き、日本酒になったあたりで、相談のふりが本気の愚痴になった。聞き上手の五歳年下の男の子に彼の悪口を連ねるにつれ、グラスを空けるピッチもつい早くなった。
徐々に尿意を感じてはいたが、男の人の部屋で用を足すのが気恥ずかしくて、我慢をしていた。
いよいよ膀胱が限界に達したので、トイレに行こうと席を立った時は、既にまっすぐに歩けない状態だった。
トイレのドアを開け、ジーンズを膝まで降ろそうとしたところで、ふらついて転倒、トイレのドアに頭を打った拍子に少しお漏らしをしてしまった。
何とか起きて用を足そうとしたが、ぴっちりしたジーンズが災いした。立つことも、脱ぐこともできない。
「助けて、もれちゃう」
翔太くんが来て、ジーンズを脱がせ、便座に座らせてくれた。
用を足すと、今度は猛烈に気持ちが悪くなってきた。
心配して様子を見に来てくれた彼に介助されながら、自分でも信じられないくらい大量に吐いた。
吐しゃ物が、私や彼の身体、衣服にもかかった。
そこから先は記憶にない。
髪や身体から嘔吐物の匂いはしない。ということは、彼に、排せつ、嘔吐どころか、入浴の介助まで受けたということだ。
皇女として、というよりも、女性として、絶対あってはいけないレベルの、とてつもない大失態だ。
穴があったら入りたいどころか、今すぐ消えてなくなりたい。あまりの情けなさに涙が溢れてきた。
彼にはもう会わせる顔がない。ともかく服を探して、彼の寝ているうちに部屋を脱出しよう。
もちろん彼と付き合おうなんてもっての他、もう一生、彼には会うまい。
服は洗濯乾燥機の中に、彼の服と一緒にあった。
服を身に着けながら考えた。本当にこれでいいのか。彼はいずれ国王になる身だ。皇女でいる限り、これから先もいろいろな形で係わりがあるはずだ。ここで逃げたら私は一生負け犬だ。
「逃げちゃだめだ、逃げちゃだめだ、逃げちゃだめだ!」
女性としてもうこれ以上はない恥ずかしい姿を彼にさらしてしまった。もう一つ大恥を重ねたところで、それが何ほどのものだろう。
彼の部屋で彼と二人きり、当初の作戦とは全く違う展開だが、千載一遇のチャンスには違いない。
ここは退路を断って攻めるしかない。窮鼠猫を噛んでやる。
自分がやろうとしていることの、あまり恥ずかしさと情けなさに涙が溢れたが、もう後戻りはしない。
私は、身に着けかかった衣服を再び脱ぎ捨てると、彼の寝ているベッドに上がり、パジャマの下を下着毎引き下ろすと、ぽろりとこぼれた彼のものを咥えた。
私の口の中のそれは、すぐに反応を始めた。
可能な硬さになったところで、私は彼の上に跨がった。
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