第13話最悪の分岐
前回までのあらすじ
お久しぶりです
「やっと思い出したの?『渡君』?」
そして彼女の口調が変わった。
「あ、てことは?」
「そうだよ。私たちはそれこそ数えきれないぐらい会ってるし、遊んでいるよ。渡君のお父さんと私の父さんは学生時代からの友人だった。その縁でね」
「そう、確かそうだったね」
今までの謎が嘘のように解けていく。
そしてそのたびに靄がかかったような記憶も思い出していく。
「むしろ今まで忘れてたことが驚きなんだけど。さて渡君、それを踏まえたうえで君に一つ質問をしよう」
「質問?」
一体なんだろう?
「私と付き合ってくれる?これは罰ゲームでも何でもない。私の純粋な気持ちだよ」
私の心臓が跳ねるのを感じた。
人生で二度目の告白。それも同じ人からの。
違うのは目の前の彼女が別次元におわす高嶺の花から、同じ次元の幼なじみになったことか。
「え?い、いやなんで?」
緊張のせいかうまくろれつが回らない。
そんな私に黒金さんは微笑みかけるとこう言った。
「そんなの理由なんてどうだっていいでしょ?気がついたら私は君を好きになっていた。人が人を好きになるのはそれで十分じゃない?」
「え、でも、ぼ、私じゃ『黒金さん』にはつりあわないんじゃ」
そういうと黒金さんは心の底から呆れたようなため息をつき、腰に手を当てながら
「あとその『黒金さん』っての止めてくれない?昔のように『英利ちゃん』って呼んでよ」と言った。
「う、あ、そのえ、『英利、さん』」
そう言っただけでもうのどが干からびそうだった。
彼女は少し残念そうに微笑むと「ま、ひとまずはそれでいいか。それで?『つりあわない』?何を言っているの?」彼女はそう言って私を正面からにらみつけた。
そしてこう続けた「そんなの誰が、いつ、決めたの?そもそもつりあわなかったら何?そんなの私達には関係ないよね?」
目の前の彼女ははっきりとそう言った。
その声には怒気が含まれていた。
「そう、ですね」
「その煮え切らない態度は相変わらずだね。ま、私は君のそういう所も含めて好きになってしまったわけだけど」彼女は嬉しそうなそれでいてどこか悲しそうな表情をしていた。
これ以上そんな顔をしてほしくなかったから自分の今の気持ちを正直に言う。
「少し時間を頂戴。今までそんなこと考えたこともなかったから少し頭が追い付かなくて」
彼女はそんな情けない答えも肯定してくれた。
「待つさ。答えが出るまで。この瞬間まで私の人生はひたすら待ちだったんだ。今更それが少し伸びた程度どうってことはないさ」
ただしと彼女は続けた「だけどあんまり焦らさないでくれよ?焦らされすぎると私自身、何をしでかすかわからないからね」
そう言って彼女はどこか肉食獣を想起させる笑みを浮かべた。
「うんわかった。なるべく早めに結論を出すよ」
それを聞くと彼女は嬉しそうにそしてどこか恥ずかしそうにしながらこう聞いてくる。
「そ、そうだ渡君は知ってるか?後夜祭のフォークダンスのこと。もしよければ一緒に踊って欲しいんだけど」
「ごめん先約があって」
「へ、へぇそうか。あ、相手は誰なんだ?馬飼さんとかか?」
彼女は震える声でそう言った。
「いや、アズマさんとだよ」
英利ちゃんの体が一瞬ビックンと震えた気がした。
そのまま互いに仕事があったため私たちは別れた。
それにしても黒金さんいや、英利さんが白い髪の女の子だなんて予想もできなかった。
叔父さんは知っていたのだろうか?
室隅が離れたあと・
少女はしばらく呆然としながら廊下を歩く。
しかしある程度歩いたところで立ち止まり、生気を感じられない声で虚空に話しかける。
「おい、内藤」
「はい。なんでしょうかお嬢様」
そこに現れたのはいつも学校では一緒にいる、内藤(娘)であった。
「アズマ=ウィリアム=ウェイトを始末しろ今すぐに」その声はいつものような覇気も自信も精気も感じられない。
その声にあったのは憎悪の念、ただそれだけだった。
あるいは
側近は事情を察すると言われた命令への返答をする。
「あらかじめこういった事態に備えて母から第2案を受け取っております。では早速開始いたします」
「あぁ頼んだぞ」
「お任せください。お嬢様」
そのとき黒金の顔には暗い笑みが張り付いていた。
同時刻・学校の中庭
「はぁ、はぁ、はぁ」
「はぁ、はぁ、これでそろそろ終わりか」
「はぁ、それはどうかな?」
そこでは二つの勢力のNo2とその部下がいるだけだった。
あと少しでどちらかが倒れる。
肩で息をしている両者はそう悟った。
その瞬間
「「ストーォォォォォォップ!!!」」
お互いの部下が間に入って止めた。
「何事だ?」
「どうしたよ?」
二人は部下にそう聞いた。
部下達は自分の上司の目を見据えて新たな命令を伝える。
「命令が変更になりました。第二案を急ぎ決行せよとのことです」
「黒金の妨害を中止。先にアズマをヤるとのことです」
そう言われて
内藤は主が告白を失敗させたことを知った。
添島は何か不測の事態が起こっていることを悟った。
そして両者は先ほどまでの敵を見据えて言う。
「一時停戦だ。協力してほしい案件がある。そちらにとっても悪い話ではないと思うが」
「乗った。んでそのアンケンってのは?」
こうして少女たちの戦いは最悪の形で次の段階へと移行する。
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