第11話当事者達も大変だ
文化祭が始まり周りは人であふれかえっている。
皆、昨日の情報を元にもう一度行きたい店や昨日行けなかった店、友達に聞いた面白そうな店に向かっているのだろう。
それはそれとして、
「あのぉ~黒金さん、少し近くないですか?」
なぜか一緒に歩いている黒金さんが近い。
なんかいい匂いもするしいろいろ当たっている。
私の名誉の為に言うが、誓って私は変態じゃない。
別に匂いは嗅いでいるわけじゃないし、体は当てているわけじゃない。
黒金さんはこちらを不思議そうに覗き込んで「あ、もしかして歩きづらいですか?」そう聞いてきた。
「い、いえ、そういうわけでは、ないんですけど」
この距離感のせいか、周りからの視線がつらい。
多分これは私が自意識過剰なせいだろうが。
すると黒金さんは「ごめんなさい。ご迷惑でしたよね」
悲しそうな声でそう言った。
その姿を見て、思わず心が痛む。
そのすぐ近く・
決して彼が自意識過剰なわけではなく本当に二人の様子は実際に多くの人に見られていた。
「せっかくお嬢様がアピールしてんのにあの男はぁ!」
その中の一人内藤の娘である、
それはあるいは異性慣れしていない相手にはかなり酷な要求かもしれない。
しかしその少女は気にせずに続ける。
「そもそもお嬢様がこの時をどれほど心待ちにしていたか、あのお洋服もこの日のために用意させた特注品だぞ。それにいつもはしない化粧だって」
(余談だがこの血洗高校では基本生徒達は化粧が校則で許可されている)
「その辺で止めておけ、そういうのは俺たち身内が知っていればそれでいいものだから」
そういったのはその少女の兄である。
つまり表記としては内藤(息子)である。
その男は続ける。
「それにしてもあのガキほんとに大丈夫か?」
「どういう意味?」
「
「し、主人って何よ。気が早いわよ」
兄の発言に妹は動揺する。
「早くねぇだろ。
「それはそうだけど」
「そういえば母さんはどこにいるんだ?あの人がいないと今この学校に来ている大人たちと連絡取れないけど」
「・・・それは今は考えなくていいでしょ。まずはこのデートを私たちだけで、でも成功させないと」
「はいはい、了解」
「はい。は、一回でいい!」
そこから少し離れた場所・
「
そういって添島の部下Bはそう呟いた。そこは学校の屋上だった。
それを聞いた通話相手は『最近の子は乱れてるって言うけどまさか名家のご令嬢までとは、いっそそれをネタに脅すか?』
そんな最悪の選択を構想した。
しかし部下Bはそれを否定する。
「やめておけ。そりゃ確かに
『確かに。なら当初の作戦通りターゲットが
「にしてもなんでカラーボールなんだ?普通に実弾でいいだろ?」部下Bがそんな物騒なことをつぶやくと通話相手は
『バカか?実弾でやってみろ。近くの少年はそのままトラウマ。文化祭は即中止。以降責任問題で最悪学校閉鎖なんてことになりかねんだろ』
「カラーボールでもなると思うけどなぁ。そういえば添島さんは?」
『連絡つかねえ。どこで何してるんだか』
同時刻・学校の中庭
そこに二人の似たような黒いスーツを着た男女がいた。
片方は現在この学校の全生徒の三分の一とその父兄である大勢の黒服を動かしている黒金勢力の№2 内藤こと
もう片方も同じく全生徒の三分の一と大勢の関係者を抱えている
火鳥勢力の№2 添島こと
二人の少女の側近達は相対する。
二人の間に流れている緊張感の中、先に口を開いたのは内藤だった。
「少年とお嬢様のデートを邪魔しないでいただこうか」
二人は互いに相手のことを本質的には自分と同じだと思っていた。
だからこそ余計な言葉を省き簡潔に要件を伝える。
これに対して添島は「それは無理な相談だな」と応えた。
その時点でどちらかがあるいはどちらともがこのままでも議論は平行線になると悟った。
あるいはこの会話が始まるより前から心のどこかではわかっていた。
であればなぜ話などしたのか
「「((口実が欲しかっただけかもしれないな))」
どちらともが
そこまで考えて、二人は微笑する。
そして静かな激突があった。
あまりにも熱い戦いだが本編には関係ないため割愛する!!
文化祭・ある廊下
私は黒金さんと一緒に(適度な距離で)歩きながらいろいろな店を見て回る。
しばらく歩くと急に人通りが少なくなってきた。
気になって周りをよく見てみると昨日アズマさんとまわった店だった。
店頭には軒並み『景品品切れのため閉店』という看板が下げられていた。
「行こう」
「え?ちょっ」
私に気づいた店員さん達の目が怖くて急いで黒金さんの手を引き駆け出した。
そのまま人通りの多い場所に戻ってくる。
日頃インドアなせいかすでに息切れしてしまった。
「大丈夫?ですか」
そんな私を黒金さんは心配そうに見ている。
ちなみに黒金さんは息切れしていない。
息を整え私は返事をする。
「大丈夫ですよ。あ、ごめんなさい。急に手を引っ張ってしまって」
「いいですよ別に。それより結構大胆なんですね」そう言って彼女は笑っていた。
そのまま休憩のために近くの(健全な)店で休むことにした。
「ぜぇ、はぁ、はぁ」
「どっちがなよなよして弱いよ。お兄ちゃんも大概じゃない」
内藤(娘)は兄を軽蔑したように見ながら言う。
そんな兄は妹に反論する。
「そりゃ急に走るとは思わねぇだろ」
「確かに、あの男があんな行動に出るなんて、少し意外だったわね。それでも兄さんはもう少し鍛えたら?護衛が主人より弱いなんて笑えないわよ」
「とにかくあの店で休もう」
「言われなくても二人とも入っていったんだし私達も入るわよ」
同時刻ある店の厨房・
そこは昨日と違い荒れていた。
「火鳥さん!料理を落とすのは今日だけで三回目だよ。昨日は何も無かったのに、もしかして何かあった?」
「いえ、その、別に」いつもははきはきと答える火鳥が今日は違う。
相手の女子は何かあると思いながらも、特別扱いも出来ないためとりあえず
「もうわかった。とりあえず厨房のヘルプお願いね」と言って裏方に回した。
そこにいた男子たちは少女たちには聞こえないようにしてささやきあう。
ある天パの少年は言った「原因ってたぶん」
それに体格の大きい少年は「室隅君だろうな」
ロン毛の少年は「今朝、黒金さんと遊びに行くの見たぜ」
そして少年たちは火鳥さんの少し隣の少女を見る。
少女の名前はアズマ=ウィリアム=ウェイト。
金のサイドポニーテールに蒼い瞳が特徴的な美少女である。
少年たちはこの美少女が今の火鳥 楓にとって一番の地雷だと判断していた。
だからアズマさんが火鳥さんに話しかけた時には彼らの背筋に冷たいものが走った。
「ねぇ、火鳥さん。少しお話しようよ」
「何?作業に集中したいのだけれど」
火鳥 楓の声にはどことなく怒りや嫌悪が混ざっていた。
「そんなこと言わずにぃ、少しでいいからぁ」
気づいていないのか気にしていないのかそんな火鳥になおもアズマは会話を求めた。
「はぁ、いいよ。何?」
ようやく折れた火鳥に次の瞬間鋭いパンチが放たれる(比喩表現)
「火鳥さんって渡君のこと好きなの?」
ビックン、と火鳥の体が縦に跳ねた。
単刀直入にも限度がある。
ヒェッと三人の少年は息を呑んだ。
(((何を聞いてんだよ!!!)))声なき声が空間を支配する。
一瞬重苦しい空気が空間を埋めつくした。
しかしそんな空気は次の瞬間溶けて跡形もなくなった。
「な、なぁ何をき、聞いてんだよ。ほ、ほとんど初対面だろ」
(((あ、可愛い)))
それは黒金派に傾いていた彼ら三人を改宗させるには十分な出来事だった。
「あれ違った?そうだと思ったんだけど」
そんなアズマさんの発言に火鳥さんはあたふたしながら「ち、違くはないよ」と否定した。
そんな火鳥にアズマは好戦的な(どこか武人やスポーツマンが浮かべるような)笑みを浮かべて言った。
「なら私たちライバルだね」と嬉しそうに言った。
「え?あなたも?」火鳥はその言葉に動揺を隠せないような表情をして聞いた。
「うん。最近気になり始めてね。それで気がついたら好きになってた」
火鳥や黒金を見てきた少年たちはそれが真実であると悟った。
元からデキテイルと(一部界隈で)噂のカップリングであったがゆえに彼らには特に驚きはない。
火鳥も悟ったのかうろたえ、悔しまぎれに言う。
「へぇ、でも彼は鈍感よ。あなたの好意に気づくかしらね?」
「知ってる。だから今日のフォークダンスの時に告白しようと思うんだ」
そこでアズマは衝撃の事実を言い放った。
「は?フォークダンス?」
「そうそこで告白する予定だよ」
瞬間、火鳥から表情が消え空気が完全に凍りついた。
耐えきれなくなった男子三人はトイレに逃げ込み、
その後『衝撃!!アズマさんフォークダンスで告白!!お相手はあの何かと噂の絶えない男 室隅!!』
そのニュースを伝えられる限りの知り合いに伝えた。
これがネット社会の恐ろしさだ!!!
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