第24編 水飴の河の流れに溺れて


勇気を出して敷居をまたいだその先に広がる世界は変わらない。でも一つだけ、手を伸ばせばあの頃のお姉ちゃんに手が届く。




あの頃は二人で小銭を出し合ってようやく届いたチョコパフェが、今ではこんなに小さく見えて思わず二つ頼みたくなる。




家族で行った遊園地、大道芸の紙芝居、最前列で眺めていたら貰ったものは水飴と貴重なあの日の思い出と。




喧嘩の後の声掛けは互いにビクビク手探りで。心のどこかの糸を持ち互いに手繰り寄せながら。




二人で夜道を歩いてく。もう帰らないと荷物を抱えて。何も知らない私のためにあんなものを抱えながら。




声にならない声を出し、一人心をさらけ出す。流れる雫をそっとぬぐう誰かの言葉を欲しがってた。




もしも過去に戻れるのなら、そんな妄想辞めさせたい。砂時計はひっくり返せないのだから。




世界で一番つらいと思いこんだ大馬鹿者。本当は一番の贅沢者。だっていつも肩に手をかけてくれるじゃない。




何も考えずに笑おうって決めた日。思い出の遊園地、懐かしさと思い出を一つ一つ手に取って冷蔵庫にそっとしまって。



10


水飴の河の流れに溺れてる。息もできずにもがいてる。大丈夫、少しずつ泳ぎ方を覚えてる。

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詠集 「水飴の河の流れに溺れて」 劇団騎士道主催 @theatre_kisido

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