第23編 じゃあ、また

1 じゃあ、また


バス停で別れる君とのこの刹那、もう少しだけと願いつつ。窓際のわんぱく坊主にアイコンタクト。



2 明日、話があるんだけど


心が躍る返答に当たり障りのない言葉、頭をひねって日が変わる。送信ボタンに指合わせ、残り5mmが果てしなく。



3 寝たか?


アラームを止めて開けるスマホ画面、冷えた頬を温める送りかけのメッセージ。未読の言葉に手を合わせ。



4 今日の放課後時間ある?


首を上げ狙いを定めて、時計の針をじっと見つめる。秒針と鼓動のリズムがずれていく。



5 ごめん、ちょっと行かないといけないからまた今度


長引いた委員会の隙間時間。迷う自分の背中の押せない後悔だけが引き潮、満ち潮、繰り返す。



6 見てる暇なかった。今日明日は忙しくて


土曜日がこんなになるまで恨めしく。遊びの話で誘ってみようか、頭の中が大サーカス。答えを待たずに閉演と。



7 実はけっこう遠いとこに引っ越すことになって


ようやく会えたこの時間。すっきりしたのは君の方。今日までの時間の雨に打たれてる。



8 二度と会えないわけじゃないしさ


ぐるぐると感情が気持ちをかき回してる。どうして? と湧き上がる衝動が頭の中をズタズタに。



9 遊びに来いよ


改札の向こうに背中が消えていく。言葉がぎっしり詰まったせいでひらひらと舞う一言は、「また今度」



10 久しぶり


ガラガラとスーツケースを引きながら表示を頼りに歩いてる。待ち合わせ、そこにいたのは在りし君。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る