第13編 秋刀魚定食
1 目薬
かすみゆく世界に未練の後ろ髪。水玉を、落とし染み入る冷風感。
2 秋刀魚定食
香ばしく香る秋刀魚につられ入る、中は同輩列をなし、顔を見合わせ気まずくも胸の内は握手する。
3 日めくりカレンダー
過ぎていく記憶それぞれに手を合わせ、思いを馳せる月の中。紙も積もれば星となる。
4 画像検索
野に咲いた名前も知らない花一輪、スマホで撮って検索すれば何もかもが詳らか。世界はどんどん狭くなる。
5 食物連鎖
雨降って乾いた路面に匂い立つ、生温かな空気に触れて、取り換える下校の調べ。
6 山
山肌に土の地肌が現れて、震える皮膚が鳥の肌。デンと構えて仰ぎ見る空の下で何思う。
7 こしあん
まんじゅうを割って見るのは餡模様。僅かなざらつき舌転び、名残惜しさに舌回る。
8 真夏日
革靴の堅い靴底踏み歩き、湿りきったワイシャツに風が一つ通って行けば、セミの声も少しは和らぐ。
9 嵐の前触れ
枯葉が一枚、舞い踊りフロントガラスに張り付いて、風雨の強さに眩暈する。恋しき家路は延々と。
10 金欠
財布を開き吐く息は溜めた思いが重なって。なぜの二文字が脳裏をはじけ、いつしか鼓膜の幻想に当てて揺られの繰り返し。
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