第12編 焼き芋

1 曇り空


冷たい窓に手を当てて、覗き込んだ空の中。雨と稲妻、手を取り合って激しくワルツを踊りめく。



2 締日


指叩く数字のビートに胸熱く。行ったり来たりの6桁が正気をどんどん削ってく。脳のシャウトが埋め尽くす内耳の迷宮、目が回る。



3 ポップコーン


銀の下、弾ける音色を耳にして。熱さと痛みの区別がつく前に気持ちだけが前のめり。



4 野良猫


缶詰一つ手に取って、いつものように外へ出る。いつものようにそこにいる。いつものように超えられなかった縁石を枕に眠るいつものやつ。



5 雪


遠くから見つめる山に白いもの。見入る分には愛おしく、想いを馳せることもある。振られた後はため息ばかり。



6 焼き芋


銀紙を破って顔出す紫の、渋みの後ろのゴールドラッシュ。熱気が冷めない鉱脈を砕いて飲み込む真冬空。



7 遅刻魔


忘れない。魔法に心を魅せられて、今日も足が棒になる。呪いにかかったわけではなく、あいつが呪いそのものだ。



8 焦げ肉


赤色がどうにも消えない焦りから、網の上で黒光り。生まれも育ちも意味がない。



9 ペガサス


羽ばたいて空を駆ける白い影。またがった足のポジション悩みつつ、たまにこすれる羽心地。



10 遊びの約束


ランドセル、放り投げて飛び出して、見知った顔を待つ間、待ちぼうけの不安に耐える。

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