第4話 しんこんりょこう

 おじさんの灯りが遠ざかったあと、奥に進んでいくと遊歩道に出た。ここは道がはっきりしているので迷うことはない。それでも彼がなんだかずっと話していてくれて、退屈しなかったし怖くもなかった。彼が


 「なんだか二人だけになったな。二人だけの旅だ。」


 という。私は


 「大人は結婚すると二人だけで旅行に行くみたいだよ。」


 といってみた。


 「パパとママだけで旅行に行くのか?」


 「うん、なんだか大人はそうみたい。」


 「男と女一人ずつで旅行に行くのか?」


 「そうだよ。”しんこんりょこう”っていうんだよ。」


 「そうしたら今俺とお前で男と女一人づつだからこれが”しんこんりょこう”だな。」


 「”しんこんりょこう”なんだ。なんだか大人みたい。」


 夜の道は確かに怖かったのだけれど、彼と話しているうちになんだか楽しくなってきてしまった。そうしたら道の真ん中に月の光で光っている石を見つけた。彼も気付いて


 「すげ〜、光ってる。これ月の石じゃないか。」


 「ほんとだ光ってる〜。」


 私が彼の手の中にある石を見ていたら、


 「これお前にやるよ。」


 と言う。


 「いいの?」


 と言うと彼は私にその月の石をくれた。


  私は月の石をしばらく見たあと大事にポケットに入れた。夕暮れのこの怖いことは、彼との”しんこんりょこう”で上書きされとてもすてきな思い出になった。

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