第4話 しんこんりょこう
おじさんの灯りが遠ざかったあと、奥に進んでいくと遊歩道に出た。ここは道がはっきりしているので迷うことはない。それでも彼がなんだかずっと話していてくれて、退屈しなかったし怖くもなかった。彼が
「なんだか二人だけになったな。二人だけの旅だ。」
という。私は
「大人は結婚すると二人だけで旅行に行くみたいだよ。」
といってみた。
「パパとママだけで旅行に行くのか?」
「うん、なんだか大人はそうみたい。」
「男と女一人ずつで旅行に行くのか?」
「そうだよ。”しんこんりょこう”っていうんだよ。」
「そうしたら今俺とお前で男と女一人づつだからこれが”しんこんりょこう”だな。」
「”しんこんりょこう”なんだ。なんだか大人みたい。」
夜の道は確かに怖かったのだけれど、彼と話しているうちになんだか楽しくなってきてしまった。そうしたら道の真ん中に月の光で光っている石を見つけた。彼も気付いて
「すげ〜、光ってる。これ月の石じゃないか。」
「ほんとだ光ってる〜。」
私が彼の手の中にある石を見ていたら、
「これお前にやるよ。」
と言う。
「いいの?」
と言うと彼は私にその月の石をくれた。
私は月の石をしばらく見たあと大事にポケットに入れた。夕暮れのこの怖いことは、彼との”しんこんりょこう”で上書きされとてもすてきな思い出になった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます