第5話
この村が人が少なくて良かったと思ったこと今一度ないでしょう。ですがマギー様には申し訳ないことをしてしまった·····。そうだ。姿がバレなければいいんだ! 確かマギーはオレンジのタルトが好きだったはず! 早速教会に戻ったらオレンジのタルトを作ってマギーのお家にお届けしなくては!。
「先生。とても嬉しそうでとてもワクワクしてますね。ですがその考えは少し時間のかかる良いことでしょう·····」
「ラウェン? それはどういう·····」 私がそう言いかけた時だった。私の教会に近づくその瞬間、世界が無音に包まれた。
この威圧感。恐ろしいほどまでの魔力の感じなさ。あぁ知っている私は知っている。この恐怖、この感覚を知っている。
ゴクリと喉が鳴る。暑くも寒くもないのに汗が垂れる。この異様さを肌で感じる、この不安感を出せるのは·····僧侶長!!。
そして、私が知っている·····わざわざ私のもとに来る僧侶と言えば·····あぁギィィと協会の扉が開く。隙間から覗く目。不安は的中する!!。
ゆっくりとだが、凛々しくこちらに向かってくるその姿!!。
今すぐに逃げたい!!。でも、私の足は震えて動かない!!。
「ナナ僧侶長。お待たせして申し訳ございませんでした·····。ナナ僧侶長の緊急依頼を受けハナバナ僧侶をお連れしました」 と言ったラウェンの発言に私に謎めいていた思考が点と点が結びつく!!。
そうか! そういうことだったのか!!。 なぜあのような場所にラウェンが来たのかという謎。それはナナ僧侶長に緊急依頼を任された為だったのか!!。
「いいえ、謝ることではありませんよラウェン僧侶。むしろ感謝するところです。よく大罪人であるハナバナを連れてきてくれました。大いに感謝します」 とナナ僧侶長は言った。
そして、私の頭が真っ白になった。
大罪人? 誰が?。えっ私が? 私が大罪人?。理解が追いつかなかった·····頭が真っ白だ。私がやった罪を数えよう·····。
「ラウェン僧侶。お疲れのところ申し訳ございません。今から私とハナバナとで、とても大切でとても重大で、とても機密のある話し合いを協会の中で始めます。このため教会内に誰1人入れて欲しくないのです。ラウェン僧侶、協会の扉の門番になっていただく事は可能でしょうか?」 ナナ僧侶長はそう言って、ティーポットとクッキーが置かれたトレイをラウェン僧侶に手渡した。
「もちろんでございます。ごゆっくりとお話をしてください」 ナナ僧侶長からトレイを受け取ったラウェン僧侶はそう言った。
いや、待ってくれラウェン。私を置いて行かないでくれ。ナナ僧侶長と2人きりにしないでくれ! 私が消えてしまう。お願いだラウェン!。
私の声など届くわけがなく、伸ばした手も届くわけなくラウェンは行ってしまった。
「さて。長い長い話をしましょう。何分、何時間、何日かかるかどうかは話の終点が見えたときにわかります。話し合いの終点が見つかるその時までゆっくりと話し合いましょう? ハナバナ」 そう言ってナナ僧侶長は私の服を掴み、教会の中に引きずり込んだ。
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