第3話 無表情なソフィアさん
「それでね、あいつったら次から次に配下を召喚しまくるもんだから、面倒くさくて仕方なかったよほんと。隙も無いし攻撃も半端なかったもんだから、どうしようかなって思ってたんだけどね、ある方法で隙を作ることに成功したの。なんだと思う?」
「……なんでしょう?」
「あいつの杖がバナナっぽい色してたから、それをバカにしたら、もう大激怒。沸点激低君で助かったよ。怒りに任せて極級魔法打ち込んできたから、その隙を狙ってグサリで私の勝ち。どう?スマートでしょ?」
「……バナナ?スマート?」
梨華の言葉に、ソフィアは相変わらずの無表情な塩対応を見せる。
スケルトン・ロードとの対戦後。スマート(?)な戦いぶりで勝利した梨華は、神殿に戻り、クエスト受注所での話もそこそこに、またソフィアの元へ直行していた。
ソフィアは、誰に対しても基本表情を崩すことは無い。梨華に対しても同様で、それはソフィアのNPCとしての性格がそうさせているのか、それともいくらこのゲームがシステム的に”作り込みがすごい”と有名だとしても、ただの一介のNPCにすぎないソフィアに労力をかけてられないが故なのかは分からない。
現に、ソフィアと梨華の会話の9割は梨華の一方通行な会話で成り立っていて、周りのプレイヤーからしても、梨華は不思議な目で見られていた
「そうそう、そのバナナ杖ドロップしたんだけど、見たい?改めて見ると想像以上にダサすぎて面白いよ。」
「…いえ、遠慮しておきます。」
「そっかあ~。また見たくなったらいつでも見せてあげるよ。というかなんならあげるよ。……いや、ソフィアにあげるならもっといい杖を……うーん、なにがいいかな……。」
ソフィアの表情は変わらない。基本”無”である。
ただ、梨華は無表情を貫くその碧く綺麗な瞳の奥に、喜びや驚きといった”感情”が在る………ような気がしていた。何年も話していたから見つけたのか、時間と共に自分にとって都合がいいように考えるようになってしまっているのかは分からないけれど。
まあ、梨華本人としても、きっと…というかほぼ確実に気のせいだろうと思いつつ、それでもほぼ毎日、ソフィアのその”感情”を見つめながら、話しをしていた。ソフィアと言葉を交わせるだけで、梨華の心は満たさせるのだから。
……それが”虚しい”ものだと、周りの人から否定されたとしても。
「……あ、そろそろログアウトしないと。明日朝早いし。ソフィア、また明日…は無理そうかも。またあさってね~。」
「…………」
ニコニコしながら手を振る梨華に、ソフィアはメイドらしく、優雅にペコリと一礼する。
そうして、梨華はメニュー画面を開き、ログアウトをしようとして…………
ー*警告:エラーが発生しました。(エラーコード:991)
「えっ、なにこれ。エラー?めずらし……って嘘!?」
目の前にエラーメッセージが現れたことに驚きつつ、ログアウトついでになんとなくその内容を確認しようとした、その瞬間。
ー*警告:エラーが発生しました。(エラーコード:991)
ー*警告:エラーが発生しました。(エラーコード:991)
ー*警告:エラーが発生しました。(エラーコード:991)
ー*警告:エラーが発生しました。(エラーコード:991)
ー*警告:エラーが発生しました。(エラーコード:991)
ー*警告:エラーが発生しました。(エラーコード:991)
ー*警告:エラーが発生しました。(エラーコード:991)
梨華の目の前には大量のエラーメッセージが表示され、視界を埋め尽くしていく。
「え、まってまって、うそ、どうしたら…」
今までなかった経験に戸惑い、そしていまだ止まらないエラーメッセージと鳴り響く不快な警告音に、梨華の心がだんだんと恐怖で埋め尽くされていく。
「だ、誰か…………」
そんな恐怖や不安からか、梨華の目には段々と涙が溢れ、それでもなんとかログアウトをしようとしてーー
「………かさま!…………梨華様!」
ー梨華の視界は真っ黒に染まり、意識を手放した。
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