第5話 計画終了?
「まずは我が人間に異形を仕向けている理由を話してやろう」
玉座に座り直すとアルジェスが話を始める。
「人間は魔法を使う時、自分にかかる負担を軽減するため無意識に魔力の一部を魔力負荷粒子に変換して負荷を逃がす。我らはこれを『
「それと異形を仕向けるのに何の関係が……まさか異形は」
「ユークトスよ、お前の勘は正しい。異形は魔負を集めて作っている。人間は魔負を視認出来ぬからな。視える物にしてやる必要がある」
「ユーク、こんな話信じていいわけ?」
サティアが声を荒らげるがアルジェスの話は続いた。
「人間は魔負を放出し続けている。このままではそう遠くない未来この人間界は滅ぶだろう。我はそうならぬよう異形を作り出し多少の凶暴性を持たせ人間と戦わせていたのだ」
「魔負で作った異形を人間に倒させて魔負を消滅させる、か。アルジェス1つ聞きたい」
「何だ」
「魔負を危険視するなら魔族を動かし人間を滅ぼす選択肢もあるはず、何故人間を助けるような方法を取ってるんだ?」
アルジェスはフッと笑うと
「魔族の好物は人間の生命力なのだよ。人間から溢れる生命力を少しずつ頂く事で好物を堪能しているのだ。滅ぼしてしまっては元も子もないだろう?」
「だから犠牲は出るがこの方法を取らざるを得ないのか」
「うむ、だがこの方法では魔負は完全に無くなる事はない。しかしお前達がさきほど見せた秘力と言ったか、あの力を使えば魔負を生み出す事無く魔負を消滅させる事が出来る。我が話をしないかと言ったのはその力に活路を見出したからだ」
アルジェスはユークトス達を眺めると
「今までの話を嘘だと一蹴するか?それとも信じるか?さあ、ユークトスよ決断せよ」
ユークトスはイスから立ち上がると腰の剣を抜きアルジェスに歩み寄る。
「そうか、信じられぬのも無理はない」
ユークトスはアルジェスのすぐ前で歩みを止め一枚の紙を剣で切り裂いた。
「これが俺の答えだ」
アルジェスの足元に真っ二つに切り裂かれた紙が落ちてゆく。それは魔王討伐指令書だった。これを見たアルジェスはユークトスの答えを理解した。
「我の話を信じると言うのかユークトス」
ユークトスは剣を納めると
「俺はお前の話を信じるよ。だから異形の出現場所は町から少し離れた人のあまり来ない場所にしてくれないか?」
「それくらいなら簡単な事だ。そして今回の勝負、我の話を信じ世界の危機にどう立ち向かえばいいかを知ったお前達の勝利と言えよう」
ユークトスの後ろでは
「ユーク、勝手に決めないでよ」
「ユークだからな」
「ユークさんなら信じますよね」
サティアとガンドとティラトスが言いたい放題言っていた。
魔王城からの帰り道ユークトスは悩んでいた。
「なあ、王様達は魔王の話を信じると思うか?」
サティアは即答する。
「フツーは信じないわよ、あんな話を信じて帰って来たなんて言ったら私達思い切り怒られるわね …でもあの王様達なら案外信じる かも?」
ユークトスは空を見ながら
「話を信じてくれれば助かるんだけどな」
サティアは少し遠くにこちらに歩いて来る人影を見つけた。
「ユーク。王様達より前にあんたは彼女に怒られそうね。ほら、あそこを見てみなさい」
ユークトスはサティアが指さす方を見ると、そこに栗色のショートカットのよく似合う少し背の低い女性がこちらに手を振っているのを見つけた。
「そっか、魔王を倒してないもんな。でも彼女になら怒られてもいいか」
ユークトスは笑顔で手を振り返した
魔王を倒すと世界の危機! 魔王を倒さなくても世界の危機!? 勇者に究極の2択が迫る! 高峰 涼 @kokoronokatachi
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます