第113話

気付いた時には自分が濡れることも気にしないで傘を放り投げて彼の身体を支えていた



「家どこ?送ってく。」




鉄の匂いと雨の匂いが混ざった何とも言えない匂いが鼻をつく。




僕は面倒ごとが大っ嫌いだ。だから、今日こんな事をしているのはただの気紛れだ。





もし、先輩に呼び出されていなかったら、雨が降っていなかったら絶対にこんな事しなかった。




「お前いい奴だな。」




藍川龍樹は噂で聞くほど暴力性があって酷い人間の様には感じなかった。だって、今も僕に負担が掛からないような体重をかけていないし、何よりも彼の傍には傷ついた子犬が1匹横たわっていた。




「ああ、そいつ。先輩たちが虐めてたから怪我してるかも。生きてる?」




子犬は怪我をしている様子ではあったが彼の様に濡れてはいなかった。それは、子犬が濡れないように彼が庇っていた証拠だ。




子犬を見る目はすごく優しかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る