第26話

「響、仕事辞めなさい。

このままだとお前が駄目になる。」




率直に言われた




父さんが俺の決めたことに口を出してくるのは初めてだ




きっと他人じゃ気付かないだろうけと、いつもより少し機嫌が悪い





こんな父さん初めて見る




怒っているのかもしれない





「・・・でも、」




こんな会社にいる価値なんてない




あんな上司の下で働いても辛いだけだ




そんなの自分が1番良く分かっている




「今日は帰ろうか。」




「うん。」




気まずい雰囲気の中荷物を持ち医務室を出る




特に会話もなくエレベーターに乗りエントランスホールへ向かう




来るのは今日が最後かもしれない




悲しいし、自分の無力さに腹が立つ




「父さんは夢とかなかったの?」




諦めたように笑いながら父さんに聞く




「俺の夢は幸せな時間を家族と過ごすことだよ。

もう叶っているんだ。」




満足そうに笑う父さんをみて情けなく思う




そんなの当たり前じゃないか




普通のことが夢なんて父さんはやっぱりつまらない




憧れているし、嫌いじゃない




だけど、大人になった今少し物足りなさと男として情けなさを感じる

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