第16話

「久しぶりだね。」




相変わらず穏やかな父さん



会うだけで元気付けられる




「うん、紫苑は元気?」



紫苑の話になるとデレデレと嬉しそうに話す父さん



本当に子どもが好きなんだな



俺たちもこの人の深い愛情を一心に受けて育ってきた



父さんは何か感づいているのか仕事の話は一切話題に出してこなかった



紫苑や他の兄妹、母さんのことばかり話していた



でも、俺としては気が楽だった



変に仕事のことや最近どう?なんて聞かれたら答えにくし、言ったところでと腹が立ってしまう




結局最後までとりとめのない話をしていた



「じゃあ、またね。

何かあったら連絡しておいでね。」




そう言って父さんは帰っていった



父さんのこういうところが好きなんだよね



自然体でいれるし、仕事のことを忘れさせてくれる



父さんと話して少し元気が出た



その日はアパートに帰ったと同時に眠りについた

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