第70話

そしてそのまま父は言葉を続ける。

「公爵様のお話が終わり次第ヴィットリオ様がここへこられる」

「!」

「今夜、公爵様も同席して頂き四人で話すことになっている。その前に、ヴィットリオ様と話すと良い」

「けれど、父上」

ティレージュ様はどう思ったろう。

余りにも目まぐるしかった一日。寝耳に水のあの女の関わり…。当の俺でさえまだ戸惑いの中にいるというのに。

その時。


俺の部屋の扉を叩く音がした。

父はその音を合図のように立ち上がる。

「また、後でな、ルシアス」

父が出ていくのとほぼ同時に主が部屋へ入ってくる。

そして父が座っていた椅子に座る。

「父上から話は聞いた」

俺と目線を合わせた主の碧の瞳は驚くほど平静だった。

「もう今は…平気か?」

俺が取り乱した事も聞いたのだろう。

「…ええ」

敢えて俺も平静を装う。

それが単なる強がりだとはわかっていても、封じ込めた筈の過去を知られるのは辛かった。

そんな俺を主はしばらくの間じっと見ていた。

だが。

「余計な心配はするな。今まで俺の知らぬ過去があったからといって、お前を責めたりはしない。お前はこの俺の『影』だ。俺を護る為に捨てねばならなかった過去なら告げる必要はない」

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