第69話

それが何故今になって。よりにもよって、表だってさえいないが、我が公爵家の反対勢力側に身を寄せている。

『あの家も大嫌い』

滅ぼしてやると毒づいた憎しみの浮かんだ瞳。

「…シアス、ルシアス!」

想いに沈む俺を引き戻したのは肩に置かれた父の温かい手だった。

「…父上」

「今、公爵様がヴィットリオ様に何もかも話しておられる頃だ」

「!」

「本来ならお耳に入れなくとも良いこちらの事情だが、欠片程の噂でもあの女の名が浮かんだなら話は別だ」


父は続ける。

「もしも相手がヴィットリオ様の十八の成人を待ってこちらの確執等は何も知らないエルンスト公一派に加わわり、今まで身を潜めていたとしたら。あれは自分の都合の悪いことは言わぬ女だ。お前との関係も手駒になると思うギリギリ迄あちらには明かさぬだろう」

「父上」

「ヴィットリオ様に告げる気はなかったのだろう。お前の事だ。私事と気持ちを抑えつけてきたのだろう。しかし逆にこの機を逃せばヴィットリオ様のみ何も知らない事になる」


父の言葉は真実を突いていた。

「あの方は公爵にふさわしい器を既に備えられている。例えお前の事情を知っても揺らがぬだけの器量をお持ちだ」

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