第62話
もともと、生まれたばかりの甥が姉から全く構われず、味方は乳母一人という状況を憂い、彼女にとっては義兄である俺の父に許可をとり、屋敷に住み込んで俺の面倒を乳母ともどもみてくれていた。この心優しい叔母を養母として育った俺は幸せだった。
実母は病死と正式な文書には届けられ。詳しい秘密を知るのは身内と、公爵夫妻のみ。主には一切知らせていない。
話す機会があれば告げるかもしれないが、今はまだ告げる気はない。
公爵家に子供が生まれ、男子とわかり『影』としての役目を授かった時、それまでの俺は一旦消え去り、新しく生まれかわったのだ。
ちなみに、生まれた子供が女であれば、俺は護衛として彼女が嫁ぐまで仕えることになっていた。
長ずるにつれ、俺は実家にいた時の事を心の片隅に封じるようになっていた。
「若様」
「…母上はお元気か?」
遠い記憶の思い返しから、ラスティの声で覚めた俺は彼に尋ねる。手足のなかでも年長者のラスティは実家と往復する事も多いからだ。
「お元気です。いつも若様の事を気にかけていらっしゃいます」
「そうか」
公爵の護衛の為に頻繁に訪れる父とは会えても、家から出ることの少ない母上とは数年以上会っていない。
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