第50話

主と共に公爵夫人のお部屋を訪ねると。

既に奥様の耳には先程迄の事が届いていたらしい。

女中が騒いでいたくらいだからそれもおかしくはないが。それにしても。

「…早耳ですね。母上」

主の言葉に。

「まあね。そういちいち耳にしなくても良いのだけれど。まるで火事場でも見たかの様に知らせてくる者がいるから」

うんざりしたように奥様は手にもっていた扇を膝の上に置かれる。


「…マリエットですか」

「女中達の騒ぎを治める立場だというのに…。真っ先に取り乱して部屋に来たわ」

「…申し訳ございません、奥様」

「まあ、ルシアス、貴方が謝ることではなくてよ。ちょうど良いベアトリスの顔見せにもなったことだしね」

「私達の側仕えになったと聞きましたが」

「知らせるのが後になってしまったわね」

マリエットが気の毒に思えるほど表情を柔らかく変えて奥様は主の問いに答える。

「きちんと場を設けたかったのだけれど。今まで側仕えをつけていなかった貴方達にあの娘を仕えさせるのだから」

「母上」

「十九にもなっているのだから遅いけれど。ルシアスがしっかりしていたから、つい甘えていたのかもしれないわ」

「奥様」

「…ヴィットリオ、あの娘は聡い子でしょう?」

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