第49話
そして。
「母上の所に行く。着替えて俺の部屋の前で待て」
「はい」
扉から出ていく主の後ろ姿を見送りながら破れたシャツを脱ぎ、新しいものに代える。その上から先程迄着ていたベストを身につければ、簡素ながら奥さまに会う服装としては十分だ。
だが、その前に。
俺は窓からテラスに出て短く三回指笛を吹く。
するとすぐにテラスに面する草陰に控える数名の気配が伝わる。
俺は彼らに命令をし、すぐに気配は散らばっていく。
ジョバンニはリュティーリア公爵家に属する手足だが、今の者達は違う。
俺の実家、伯爵家に仕え、父には父の、俺には俺の手足がいる。
普段は屋敷にある控えの間に詰め、人の眼に触れる事すらない。通常通りに主を護っていれば呼ぶことも稀だ。
が、それでも調べさせたい事があった。
表面上は平穏な日々に一つ落ちた波紋のような出来事。だが今、影として主の為に得ておきたいのは多方面からの情報だった。
「あらまあ、二人とも大変だった事。もう手当はすんだの?」
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