第48話

俺の肘の手当てを終えて用具をテーブルの端に寄せ、主は続ける。

「まさか自分が怪我にも気づけぬほど夢中になるとは思わなかったが」

そしてふっと、笑みを浮かべる。

「楽しかった。お互いの本気が眼で見えるような打ち合いが。…いつも俺を護るためだけに心配りするその瞳が剣気だけを帯びているのが快かった」

「ティレージュ様…」


「練習用の剣で幸いだったな。お互いが命拾いした訳だ」

主はもう一度笑う。

冷酷と激情をその胸に併せ持ちながら、時折、こんな風に年相応の顔を見せる。この笑顔をいつまでも護りたい。

祈りのようにその想いが俺の心に浮かぶ。

そして何故かふと、王宮で同じ想いを己の主に対して抱いているだろう男の事を思う。

「…ルシアス、何を考えている?」

俺に聞く主に答えを返す。

「アルフォンソ殿の事を…」

「そうか」

俺の考えていることを主は察したのだろう。

俺の考えが深く沈む前に、主は話題を替える。


「レナード殿下は悔しがるかも知れないな、今日の事を話したら」

「ティレージュ様」

「あの方の性格ならばきっと。今度自慢してやろう。昨夜のお返しもしたいしな」

先程俺に見せた笑みとは違う笑みを見せて。

主は今迄座っていた椅子から立ち上がる。

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