第47話

肩の傷は大したものではなかったが、肘は少し深いようだ。主が服の上から傷の場所を押さえると、痛みのために眉根が寄る。さすがに先程の様に声には出さないが。

「…痛いか」

「…それほどは」

「少し破くぞ」

主は傍らにあった小刀で器用に袖を裂いていく。

現れた傷は思っていたよりも小さかったが、主は目を細める。

「…。悔しいが、確かに打ち合いを止めさせたという点ではあの娘の判断は正しかった」

本当に悔しそうな顔をして主は言う。

「あのまま続けていればお前にしばらくは使い物にならぬ怪我をさせるところだった」

「何を言われるのです」

「だが、止められなかった。何故かはわからない」

それをあの娘に指摘されたような気がして腹がたった。そう言いながら主は俺の手当てを続ける。

「俺も同じです。貴方が謝ることじゃない。」

昨日の出来事から、どこか双方とも気の高ぶったまま始めた打ち合いだった。

「俺の方こそ、護るべき貴方に傷をつけた」

「それは違う」

いつの間にか、目を反らして呟いた俺の言葉を、主は驚くほどの強い口調で遮(さえぎ)った。

「元はと言えば俺が煽った事だ。昨日のお前を見て鍛練ではなく本気で俺と向き合う姿を望んだのも俺だ」

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