第46話

主の呟きにそう答えるが。

「剣の『気』を読んだだと?」

手合わせを止められた悔しさと意外な人物の現れ、その言動に未だ主の声は尖ったままだ。

「ティレージュ様、俺の部屋で手当てを致しましょう。そのままでは後に響きます」

そっと促す。

「ああ」

歩き出す主の後ろで俺も似たような事を考えていた。

剣の『気』もそうだが。あのときベアトリスは己の主であるティレージュ様ではなく、この俺に触れて傷を示した。

…あれは意図的なやり方だった。

俺は主の『影』だ。影の存在を無視して主に関わりを持つ事はけして許されない。だからこそ俺に触れて気づかせたのだ。善きにつけ悪しきにつけ、主の鋭い眼差し、低く怒りを秘めた言葉をしっかりと受け止めながら揺らぐことのなかった青い瞳の娘。

以前見せた姿が仮で今の彼女が真の姿、もし両方を使い分けているなら末恐ろしい。

彼女への疑問はいくらでも湧いた。だが、今の俺が優先するべきは主の手当てだ。


俺の部屋に着き手当てを始めると、ようやく鋭かった主の表情が緩んだ。

幸い切り傷は軽いもので、手の腫れも良く冷やせば明日にはひきそうだった。俺が主の手当てを終えると、主は黙って手当ての支度を手元に引き寄せ俺の手当てを始める。

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