第41話

「お待たせ致しました」

剣を主に差し出しながら声をかけると。

顔を上げた主の眼が俺の全身を映(うつ)し、ほんの一瞬、その瞳が見開いたのを、俺は見逃さなかった。

「行くぞ」

「はい」

鍛練はいつもの事だが、こんな機会は初めてだ。

彼が育つ過程で何度か、護衛の為に剣を振るい、主が昨夜言ったように共に真剣で闘った経験もあるがそれはあくまで護りの中での事。

彼が鍛練で見てきたのは剣技の練習相手としての俺。だが今彼が俺に望んでいるのはその俺ではない。何でもないように俺を促しながら、彼の声には常にはない熱情があった。それに気づけるのは俺と、数少ない人間だけだろう。

鍛練場である裏庭に向かいながら、自分もまた興奮の境地に到(いた)っているのを自覚する。

まさか『本気』になるわけにはいかないが。今日の鍛練は俺にさえ予想のつかぬものになりそうだった。





半刻(一時間)後。

裏庭に響いていたのは、剣の刃のぶつかる高い音と打ち合う時にぶつかり合う身体から出る鈍い音。

「はっ!」

胸にむけて主が突きこんでくる剣の刃先を軽くかわし、主の足元に剣を下(お)ろす。

それを紙一重の差で身体をずらし、また次の技を打ちこんでくる。

一度離れ、お互いに間合いを取る。

「まだまだっ!」

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