第34話

その間に俺は四人の刺客だった物体を裏庭の藪に隠し、息のある二人を縛りあげてその近くに寝かせる。

紐はほどけやすいようにしてある。

「さて、どこの誰やら」

二名を殺さないのは慈悲ではない。放たれた鼠が飼い主の元へ帰るのを確かめるためだ。鼠の最期がどうなるかは知った事ではない。

「ジョバンニを」

言われるまでもなく。すぐに指笛を二回高い音色で吹く。

数秒後。

「お呼びでしょうか」

床に片膝をついて礼をとる若者。

普段は馬車を御しているが、こうした時には主の手足となって働く。

「この二人が目を覚まし、どこへ帰るかを探れ」

「はっ!」

短い返答の後、闇に消えるジョバンニを見送ったあとに主が呟く。

「久しぶりだな、真剣を振るうのは」

お互い息も乱れていないのは日頃の鍛練の成果か。主の場合、若さもあるだろうが。

「お見事でした」

言った俺の台詞を主は誉め言葉とはとらなかったようだ。

「…悔しいがまだお前には勝てない」

速さも技量も、と。

主の剣の技は人並み以上なのだが。

「勝ってもらっては困ります。“影”の意味がない」

「ルシアス」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る