第35話

「それよりも、先程の者達の太刀筋は」

言うと。主は傍に立つ俺を見やり、

「やはり、お前の方が上だ。一瞬で見切ったのが分かった」

「それが、私がここにこうしていることの『意義』ですから。ティレージュ様」

彼を護る事に、義務という言葉も役目という言葉も使いたくはなかった。恐らくそれは主が最も嫌う言葉だから。

「……」

ふっと、口角をあげて主が笑みを浮かべる。

俺の言葉は彼を満足させたようだった。

「しかし、…早いな。夕刻からの宴で“今”とは」

「…本日は宴の途中に座興がありました故、その時に、花の中に蛇がまぎれ混んだか…、もともと花の中に棲(す)んでいたか」

「…座興とは手厳しいが(苦笑)。ジョバンニが戻れば解る話だな」

「はい」

「帰ろうか。少し疲れた」

「それでは馬車廻りへ。今日は私が馬を御しますから」

「…頼む」

明日は幸い登城の予定はない。主も少しは身体を休める事が出来るだろう。ジョバンニの報告次第だが。

襲った相手もその目的も既に予想はついている。

けれども迂闊(うかつ)には動けない。

それが貴族に生まれた者の習わし。

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