第32話
彼は続ける。
「主と決めてしまったからには仕方がない。それに…負けず劣らずこちらとて面倒臭い性格なのだからお互い様だ」
「ええ」
いつの間にか俺達は笑顔を浮かべていた。
アルフォンソ殿と話すと、不思議と気が落ち着いてくる。焦る必要はないのだと教えられているようで。
彼の覚悟に達するのはまだまだ先の話だと思いしらされるけれど。嫌な感情は湧かない。
「さて。『お仕事』の合間にお互いの主への返礼でも考えますか」
新しい糸巻きを手にして楽しそうな彼を見ながら、俺も笑顔になる。
「そうですね、まだまだ数は有りそうだし、ゆっくりと」
多分今、俺達はマルクス様やリヒャルト様が見たなら冷や汗を流すであろう物騒な笑みを浮かべているだろう。
姫君達の輪の中、俺とアルフォンソ殿が何を考えていたのかは…想像にお任せする。
「それでは殿下、失礼致します」
殿下の居室を出たのはそれから半時(一時間)後。
いつもよりも、遅い時刻だ。姫は嬉しそうだったがおそらくレナード殿下は女官長に文句を言われるだろう。
刻は深夜に近い。殿下は部屋を用意させると言ったが、主はそれを丁重に断った。
そして俺と二人、馬車の待つ王城の入り口へと向かっている。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます