第30話
「結構大変なの。私が言うのもおかしいけれど。レースリボンは色々な所に使うから。皆仕事の合間に巻き取りをしてくれるのだけど追いつかないときもあるわ。だから、私思いついて。考えを話したらアナスタシアも皆大喜びで」
嬉しそうに言う。
カーペットの上に直接座り、娘達に囲まれて“作業”をする自分達などけして人にはみせたくない姿ではあるが、アンジェリーナ様のお気には召した様だ。
「まさかアルフォンソ殿とルシアス殿が手伝って下さるとは」
先ほどアンジェリーナ様が言っていたアナスタシアという名であろう宮女も笑みを浮かべている。
きびきびとした動作、素早い受け答え。王女のお気に入りの女官らしい。強い意思を瞳にたたえた娘だった。
「内親王殿下のこのようなお喜びかたは久しぶりですわ」
喜ばれてもこちらは単純には喜べないが。
「お役にたてればこちらも嬉しい。不器用なものでかえって手間をかけるのではないかと心配ですが」
一つを巻き終わり、俺は側(そば)の宮女にそれを渡し、別のリボンを手にとりながら、さりげなく隣室を窺(うかが)う。
低い声は聞こえるが、話の内容までは届かない。
隣ではアルフォンソ殿もまた気づかれぬよう隣の部屋へ視線を走らせている。ふと、眼が合って、お互いに苦笑する。
まさか密談(?)の為の囮にされるとは思わなかった。
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