第25話

内親王殿下は可愛らしく小首を傾げられる。

「あら、でもティレージュ様は私よりも年上でしょう?それに私はこの間から何回か参加させて頂いたばかり。年上のかたを呼び捨てにするのは失礼ですわ」

「聞かれましたか、殿下。内親王様のご見識の高さとお優しさを。よいお妹君をお持ちだ」

主の声は皮肉さを消してはいなかったが、驚く程に穏やかだった。俺も主の後ろで頷く。悪いが、百戦錬磨のレナード様も妹君の前では形無し。彼の表情が心なしか苦笑に満ちていたのは致し方ない事だろう。



そして、半刻(一時間)後。

殿下の宴のいつもの流れなのだが、招待客による宮廷の動向に話が移っていた。

「…エルンスト公爵家の話は聞いたか?」

「ああ、今度娘を宮廷に御披露目とか。あのでっぷり太った公爵の娘では期待薄だがな」

「いや、万が一ひょうたんから駒ということもあるかもしれん」

「蛙の子は蛙かも知れんぞ。親が蛙そっくりだからな」

「…口の悪い。」

先ほどから皮肉めいた談笑をひっそりと交わしているのは殿下の友人、マルクス様とリヒャルト様。

「何が目的かは一目瞭然」

「ここのところのエルンスト公のオルランド様へのすりよりかた、ああもあからさまではねぇ。娘とて道具につかうくらい簡単だろう」

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