第24話

先に国王陛下には三人の男のお子様がいらっしゃると言った。だが、国王陛下には今一人お子様がおられる。

その方こそ今目の前におられる、アンジェリーナ内親王殿下。レナード殿下の年の離れた妹君。

レナード殿下と12歳、ちょうど一回り違う彼女は、当然の事ながら王后陛下との間のお子ではない。しかし王后陛下の侍女であリ、後に側室に上がられた母君が赤子の頃に亡くなり、王后陛下が以前より皇女を望まれていた事もあって、掌中の珠のようにいつくしまれてお育ちになった。

素直で明るく、そして何よりも聡明な方。

「いいえ、駄目よ、お兄様。ルシアスの見事な黒髪がそんな事になってごらんなさい?ティレージュ様がどれほど困られるか?」

俺に目配せしながら花のような笑みを浮かべられる。

「内親王殿下」

「アンジェリーナ様、私の事はティレージュとお呼び捨て下さい」

その時主がスッと会話に入ってくる。

彼女は王族。本来ならば例え王家につながる家系とはいえ“臣下”に『様』などとつけるのは有り得ないこと。宮廷雀が耳にすればさぞかしやかましく騒ぐだろう。この宴にそれを漏らすものなど万が一にもいないだろうが。

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