第19話

レナード様は国王陛下の三人いる男のお子様の中では末っ子にあたられる。

宮廷雀は言う。“軽薄で女好きな三男坊”。

確かに。目の前で涼しい顔をしている殿下は噂通りの方に見える。

しかし実は優れた頭脳の持ち主。勿論、普段はその素振りさえ見せない。

「そろそろ行かないかい?宴の支度は出来ているし。あまりに遅くなると侍従に叱られる。それに」

微笑んだままのその口で、俺と主にしか聞こえぬ声で彼は言う。

「…少々やり過ぎたようだ」

主と俺はそれに頷く。勿論あちらこちらから窺っている貴族とは名ばかりの奴らに気づかれないように。

「仕方ない。行ってあげましょう。レナード様」

主は呆れた振りをしながら先に立った親王殿下の後について歩き始める。勿論俺もその背後から従う。それにしても。この頃の親王殿下の誘いは頻繁だ。少し目立つ程に。

「殿下」

人目につかぬ廊下にさしかかった時、今まで黙っていた主が口を開いた。

「いつまであんな三文芝居をやらせる気ですか」

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