3.~王城~

第15話

馬車が王城の馬車溜まりに着いた時には、すっかりと日は暮れていた。

城内へと続く階段へ主と共に向かう。

後ろを振り向く事なく足早に颯爽さっそうと城内に向かう主に付き従うのは何度となく繰り返される日常。

そして。この頃はここにくるたびに、主が面倒臭がる雑事に対処しなければならないのもまた『日常』だった。

そこかしこから聞こえてくる声。


“見て?リュティーリア公の若様よ”

“この頃は夕方の伺候しこうも多いらしいわ。宴にも出席なさるとか”

“じゃあ今日も?”

“解らないけれど、お顔が見れただけで嬉しいわ”

“そうね。お友達に自慢出来るわ”

“本当ですこと”


好意的な令嬢達のこそこそ話。だが、それに混じってけして好意的とは思えぬ宮廷雀達の声も聞こえてくる。


“リュティーリア公の若君の人気は相変わらずですなぁ”

“また相変わらずの無表情で。でもまああの美貌、公爵家の後継ぎとなれば令嬢が群がるのも不思議はないが”

“やはり筆頭公爵家の若君ですからなあ”

“王家の方がたからの覚えもめでたいらしいし”

“…どのような取り入り方をされたものやら。あやかりたいものですな”


面と向かって口をきく事も出来ぬ烏合うごうしゅうの聞くに耐えない陰口。

それを全く意に介さない俺と主が余計に気にさわるのか、囁きがやむことはない。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る