第14話

けれど俺は主のその一言と彼方を見やる眼差しで、主の真意を汲み取る。

「ティレージュ様」

彼はあることを嫌がっているのだ。いつもの事だが。

「お約束です。ティレージュ様」

「…わかっている」

俺は主と公式の場に向かう際、彼に二つの約束をさせている。

「…一つ、無用な挑発はしない事、…二つ、『影』に何があろうとも動揺しない事」

影の役目は色々あるが、これは誰に言われるともなく俺が決めた約束。

彼が幼い時から私用での外出以外は必ず誓わせてきた。

だがこの頃、特に二つ目の約束をさせる度、主の瞳に、うっすらと浮かぶ感情の揺らぎに俺は気づいている。

主が先ほどの俺の揺らぎに気づいた様に。

ただ一つ、救いはそれを破らせるような事態が未だ起きてはいないことだ。

命など毛頭惜しむつもりはないが、主を護れなくなる事を俺は怖れる。


もうひとつの約束については、追々分かるだろう。

馬車は着々と王城に向けて動いている。

予想よりも早く王城に着きそうだった。

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