「夢は仕事になるのか?」に答える物語

 この物語、読み進めるうちにまるで自分も“無茶振り”の現場に巻き込まれたような、心地よい焦燥と高揚感に包まれていきました。

 『ワグテイルプロジェクト』は、決して順風満帆ではない現実の中で、それでも何かを「作りたい」と願う人々の物語。印象的だったのは、無地の紙にユウヤが書いた「ここから始まるオレ達の挑戦」。空白に思いを託すあの一文に、社会人としての誇りと青春の熱さが同居していて、思わず息を呑みました。

 営業畑から未経験でゲーム開発に飛び込んだユウヤの不器用な奮闘に、なぜだか自分を重ねてしまいます。コノハの破天荒さもどこか憎めず、クセ者ぞろいのチームに、ちょっと抜けてるけど真っ直ぐなコノハ、SNSから飛び出したスズナの勇気…それぞれのキャラに温度があるのが嬉しい。IT業界のリアルもちらりと見せつつ、根底には“ものづくりの原点”が流れていて、読んでいてクスッと笑える場面も。

 夢を追うことの泥臭さと、それでも走り続ける人間の美しさが、静かに胸を打つ作品です。

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