第7話

「まぁ座んな、座んな」


奥さんに背中を押され、いつもの指定の席に腰掛ける。


カウンターから店主が見えるこの光景も懐かしい。



「元気そうでよかった」



店主はガハハと大口で笑う。


「最近来ないからアレと心配してたんだ」


店主は他のテーブルでオーダーを取ってる奥さんを顎で指した。


ネクタイの結び目に指を入れて緩める矢吹が「最近忙しかったんで…」と返した。


そしてメニューを取った。


「梨華何する?」


「えっと…」


「明日は休みだし少しくらいなら飲んでいーぞ」


私達の会話に店主は「おー!そうだった!あんた飲めないんだっけか?」と思い出してくれた。



「弱いくせに飲もうとするんですよ」


「だって飲みたいときだってあるじゃないですか!」


「限度を考えろ。後で苦労する俺の身にもなれ」


「弱いんだから仕方ないじゃないですか!矢吹さんみたいに強くないんですー」


私はムッとした表情で唇を突き出す。


その突き出た唇を矢吹は指で摘み、「だから弱いなら弱いなりに、量を考えて飲めって言ってるんだよ」と言い返されてしまった。


「…ひゃい」


結果、いつも通りこうなってしまう。



そのやり取りを見て、店主は大笑いした。



「その漫才も懐かしいわい!」


私達の笑い声に奥さんが「なんだい、なんだい?」と興味津々に間に入ってきた。

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