第8話

矢吹はビールを注文し、私はカシスオレンジを頼んだ。



「学習したな」



矢吹がゴトンとジョッキを置く。


「飲みたいからって焼酎とかウイスキーみたいに、アルコールの強いもん飲んでたころに比べたら」


「それバカにしたように聞こえるんですけど」


「前まではな。今は誉めてんだ」


拗ねるようにチュゥ…とカシスオレンジを吸う私に矢吹は「アルコール少ないからって飲みすぎんなよ」と言う。


「そこまでバカじゃないですー」



反論してみたものの、アルコールが少ないと言ってもやっぱりお酒だ。


グラスの半分ぐらいになると顔が赤くなってくる。


それをとっくに気付いていた矢吹は「すいません、熱茶いただけますか」と片手を挙げて奥さんに注文した。



しばらくして奥さんが熱茶を持ってきてくれる。


「ありがとうございます」


私と矢吹の間から熱茶をテーブルに置いた奥さんに礼を言う。


置いたついでと言うか、「そういや」と奥さんは私達を交互に見た。




「あんたら結婚はしないのかい?」



それは今、私が一番知りたいことで、気になることだった。



途中、店主も「お!ワシもそれ気になるなぁ!」と入ってきた。



胸が余計なぐらいに激しく鳴っている。


そろー…っと矢吹へ視線を送った。


「あー…」



聞こえてきたのは短い返事。


少し期待していたからショックを受ける。


心の中でため息を吐いた。

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